「戦争デジタル情報」の分析について [試行中]
○定義 「戦争デジタル情報」とは、戦争を体験した人々がいなくなる過渡期に、戦後世代が、平和を考え守り抜くために参考となる①戦争の記録(戦争当時の資料や映像)や、②戦争証言アーカイブなどであり、インターネット上に作られたデジタル情報のことを指す。 「戦争記憶のアーカイブ」とは、戦争証言を収録したアーカイブであり、戦争経験者達の戦争体験について生の声を集めた資料庫である。 |
【HPの課題】 ①2022年度に情報の全体像を把握し整理するために、戦争デジタル情報の分類枠組を示す。 ②2023年度に、NHK戦争証言アーカイブスなどのいずれが児童・生徒向きか、 また国内にある平和博物館が戦争体験証言をウェブ上にどのように掲載しているか について内容構成を明らかにする。 【いくつかの知見】 ・戦争体験証言動画を、多く掲載しているのは、「NHK 戦争証言アーカイブス」1334件(2023.5.6現在)、 「 広島平和記念資料館」655件、「 沖縄県平和祈念資料館」102件、などである。 |
表1 戦争デジタル情報の分類枠組
分類指標 | 分類項目 |
開設時期 | 2000年以前、2000年~2009年、2010年以降 |
開設主体 | マスメディア(新聞社、放送局)、平和資料館、地方自治体、民間団体 |
情報種類 | 総合的、戦争記憶アーカイブ、戦争資料、映像資料、教育資料、教材 |
証言種類 | 被爆体験、空襲体験、従軍体験、戦時体験 |
証言方法 | 埋込動画、ストリーム配信、YouTube動画 手記 |
体験証言数 | 証言ビデオ数が1000以上(1)、500以上(1)、 100以上(?、 |
証言配置(分類法) | 年代別、年齢別、所属組織別、有名・無名、地域別・マップ使用 |
証言動画収録時期 | 1980年代、90年代、2000年代、2010年代以降 |
開設目的 | 平和啓発、平和事業の一環、平和教育の教材提供、事前資料、感染対策 |
アーカイブ名 | 概要 | 利用方法 |
1986 「広島平和記念資料館」 |
開設時期:(1955年開館)、掲載時期?。掲載主体:広島市。 情報種類:証言ビデオ(1986年度から収録)、写真、動画。証言種類:修学旅行用の被爆体験講話(32名分)。1986年度から収録している被爆者の証言ビデオ「ヒロシマの証言 被爆者は語る」が視聴できる。証言方法:YouTubeあり 体験証言数:655件1,000人以上の被爆者の証言を映像に記録。証言配置:場所、爆心地からの距離、被爆時年齢、性別、字幕の有無 証言時期:1986年制作~。 開設目的:平和データベースのページでは、同資料館が所蔵する資料が検索できる。 |
被爆体験証言の中から、修学旅行用に選択してある。 |
2005 「平和への願いをこめて - Sokanetムービー - | 創価学会が推進する「戦争体験の継承記録運動」の一環として」 開設時期:2005年?←終戦・被爆の被爆の60周年の節目。開設主体:創価学会。情報種類: 証言種類:被爆・広島(4)、被爆・長崎(5)、沖縄戦(5)、引き揚げ(6)、戦禍の中の看護婦たち(3)、戦時下の女性と子どもたち(4)、空襲(4)。証言方法:YouTube動画。体験証言数:【31名】全国約180人の女性の体験を取材し、代表31名の証言。証言配置: 開設目的:この映像記録は、創価学会女性平和委員会が推進する「戦争体験の継承記録運動」の一環として制作。 |
女性の証言が中心。 |
2009 「NHK 戦争証言アーカイブス」 戦争証言動画 総合検索 |
開設時期:2009 NHK 戦争証言アーカイブスが試行開設(2010 本格オープン)。開設主体:NHK。 情報種類:ニュース映像、特集番組線、戦争証言。証言種類:マレー・インドネシア方面(12)、ビルマ方面(74)、ニューギニア方面(59)、フィリピン方面(108)、太平洋の島々(120)、中国(54)、日本国内(350)、朝鮮半島/旧・満州/樺太・千島(196)、海戦(93)、特攻(80)、航空戦と潜水艦戦(18)、その他/欧州・米国など(14)、原爆(15。) 証言方法:ストリーミング動画。体験証言数:1334件(2023.5.6現在)。証言配置:上記体験場所、総合検索[地図から探す・年表から探す・所属組織から(陸軍・海軍・市民・その他から)探す]。証言時期:?。 開設目的:戦中、戦後そして現代へつづく日本人の歩みをまとめたサイ。 |
高校生以上が探索的に証言を選んで視聴sるのに適している。 |
2015 Yahoo Japan 「未来に残す 戦争の記憶」 | 開設時期:2015(Yahoo Japan(東京)が開始)。開設主体:Yahoo Japan。 情報種類:戦争に関する写真やデータ、戦争体験証言。証言種類:?。証言方法:手記、新聞記事。体験証言数:「証言」78件。証言配置:証言(78)→#あちこちのすずさん→#ウクライナ侵攻1年。証言時期:?。 開設目的:「戦時中の生活と未来へのメッセージ」「都道府県ごとの空襲の記録」「年表でみる空襲の記録」「Q&A と用語で知る戦争」の 4 つのテーマを掲げ、など、未来の平和を考えるための資料が集められている。 「#あちこちのすずさん」のページは、戦時下に暮らす人々の日常エピソードを収集。(「記憶を受け継ぐ資料館」として国内の5つの戦争資料館の特徴を動画で紹介するページあり。) |
開設時期が新しく、身近な視点から、また現在進行の戦争を扱う。 |
2016 「みたかデジタル平和資料館」 | 開設時期:2016.2(HP 上に「みたかデジタル平和資料館」を開設)。開設主体:東京都三鷹市。 情報種類:三鷹市の平和事業、歴史・戦跡・シンボル、戦争関連資料(写真)、戦争体験談(書籍)、戦争体験談(動画)。証言種類:外三鷹での体験談(6)、東京大空襲(6)、広島・長崎(14)、国内(12)、国外(10)。証言方法:動画で視聴。体験証言数:48件。証言配置:?。 開設目的:戦争関連資料〈写真〉として、市民の方々から集められた戦争遺品や当時の生活用品の写真が公開されている。 |
東京の人の身近な場所で起こったことの証言を聞ける。 |
2020 「みんなの戦争証言アーカイブス」 |
開設時期:戦後75年を前に。開設主体:「みんなの戦争証言アーカイブスプロジェクト」。 情報種類:先人たちの戦争証言素材を広く集める。証言種類:?。証言方法:誰でも聞くことができる環境を提供。体験証言数:20名。証言配置:?。 開設目的:太平洋戦争を体験した方々の証言を、記録し公開する。映像は著作権フリーで提供され、証言者の言葉も極力ノーカットで公開している。プロジェクトのコンセプトは、開かれた戦争証言アーカイブス。 |
誰でも聞ける環境を提供していただいた。 |
2020 「徳島大空襲75年 体験者の証言動画」 | 開設時期:2020年7月。開設主体:徳島新聞・YAHOO共同企画。 情報種類:体験者の証言動画。証言種類:徳島大空襲75年~体験者の証言。証言方法:YouTube動画。体験証言数:4名。証言配置:<徳島大空襲75年~体験者の証言>。開設目的:?。 |
証言数が少ないので、選ぶ手間がかからない。 |
2022 「戦争体験者等証言動画(上越市)」 | 開設時期:2022年8月。開設主体:上越市公式チャンネル。 情報種類:証言動画。証言種類:?。証言方法:?。体験証言数:9名(1名は戦後生まれの証言)。証言配置:YouTube動画、DVDの貸出。 開設目的:2022年 市立高田図書館で開かれていた「平和展」に合わせ、市民が自らの戦争体験や平和への思いを語る証言動画を作成した。戦後80年が近づき、戦争体験者はどんどん減り、悲惨な先の大戦の「生の声」を聞く機会が失われつつある。ロシアによるウクライナ侵攻が続く中で迎えた終戦の日に、上越市民の証言と平和への思いを紹介している。 |
上越市の市民たちが集めた証言としての価値あり。 |
2022 「岡山市 戦争体験証言映像」 | 開設時期:2022年3月。開設主体:岡山市公式Youtubeチャンネル。 情報種類:?。証言種類:?。証言方法:YouTube動画。体験証言数:8件。証言配置:HP埋め込み、DVDも貸出可。 開設目的:岡山市では、岡山空襲や戦時下の岡山の生活について、体験の聞き取りを行っている。岡山空襲展示室に保管する聞き取りの映像記録の一部を編集し、広く市民の皆様に視聴していただけるようにしている。 |
岡山市の身近な場所であったことの証言を聞ける。 |
【参考資料】 ・「戦争の記憶をめぐるアーカイブ」(令和3年度 新宿区立図書館 開発事業) https://www.library.shinjuku.tokyo.jp/lib/files/R3nishioshi_sensonokioku.pdf |
沖縄県平和祈念資料館 開設時期: 開設主体: 情報種類:「戦世の記憶」のページでは戦争体験者の証言を多言語で収録したもの 証言種類: 証言方法: 体験証言数:102名 「沖縄平和学習アーカイブ」では、沖縄戦争体験者 102 人の証言 証言配置: 開設目的: 沖縄戦について、地図や写真を用いた解説、182 点の沖縄戦写真、資料地図を見ることができる。 |
102人のそれぞれの証言に、寄り添いたい。 |
沖縄県公式チャンネル(youtube) 戦争体験証言集 [同上内容] 開設時期: 開設主体: 情報種類:沖縄戦体験者の戦争証言など 証言種類:「沖縄平和学習アーカイブ」→「証言一覧」 証言方法:YouTubeリンク 体験証言数:101 人(102?) 証言配置:タイトル+分類(属性:母・子ども、男子学徒隊、一般住民、戦闘員、女子学徒隊)。視聴することができる 開設目的: |
同上 |
館名 | オンライン戦争体験証言 | HPに子ども向けページ | 現在の展示テーマなど | 学校段階 |
広島平和記念資料館;公立 | 証言665件、館内視聴可 | ? | 原爆被爆体験、被爆までの軍都広島、核時代の情況 | 小中高 |
沖縄県平和祈念資料館 (沖縄県糸満市);公立 |
戦中・戦後の証言映像集 | 沖縄戦への道、地上戦の体験、捕虜収容所の生活 | 小中高 | |
知覧特 攻平和会館(鹿児島県知覧市) |
デジタル資料あり | 小学生向けページあり | 特攻隊員の遺影、遺書、知覧飛行場の様子 | 小中高 |
仙台市戦災復興記念館(関連ページへ);公立 | 4本の戦争証言DVDあり | 仙台市の発展、仙台市空襲、戦災復興 | 小中高 | |
ひめゆり平和祈念資料館 (沖縄県糸満市) |
学芸課職員の平和講話 | 沖縄戦までの経緯、陸軍病院壕、戦下の南部撤退、 ひめゆり学徒の遺影と犠牲状況 |
中高 | |
大阪国際平和センター(ピースおおさか)(大阪市);公立 | 7本の戦争体験証言映像 | 平和学習デジタルコンテンツあり | 十五年戦争下における加害体験(休止)、大阪空襲、第二次大戦後の地域紛争・局地戦争、平和を求める国際的な動き | 小中高 |
埼玉県平和資料館;公立 | 戦時下の疑似場体験あり | 十五年戦争中の時代情況、熊谷空襲、戦中の人々の暮らしや考え方 | 小中 | |
高松市平和記念館(元高松市市民文化センター:国際平和展示室):公立 | 6本の高松空襲の証言映像 | 戦時下の市民生活、高松空襲 | 小中 | |
平和祈念展示資料館 (東京都新宿区);総務省委託 |
抑留・引揚げなど証言映像 | オンライン平和学習支援プログラムあり | 第2次大戦後戦後の強制抑留者、海外からの引揚者の労苦 | 中高 |
国立広島原爆死没者追悼平和祈念館 | 被爆証言映像の検索ができる | 原爆死没者の遺影、被爆体験手記 | 中高 | |
滋賀県平和祈念館 (滋賀県東近江市);公立 |
戦争体験証言ビデオあり(2015年以前より) | 平和学習支援あり | 満州事変から太平洋戦争までの滋賀県民の戦争体験 | 小中高 |
北九州市平和のまちミュージアム (北九州市小倉北区);公立 |
戦争の体験談あり | 戦争と市民の暮らし、八幡大空襲と戦後復興 | 小中高 |