は じ め に |
現在の若い教師が、平和教育の実践方法を自分のものにすることを期待して、平和教育の授業づくりのためのHPをお届けします。2022年2月にウクライナで戦争が始まり、今の戦争を子どもたちにどう教えるかも課題になってきました。日本が参戦した第2次世界大戦は80年近く前のことになり、戦争体験者から直接お話を聞く形の平和教育は非常に難しくなっています。また、コロナ感染症対策や、学力向上、情報化への対応など、次々に増える教育課題により教員が多忙化し、平和の問題にじっくりと向き合って教材研究をする時間を取りにくくなっています。 日本の平和教育では、広島や長崎の被爆体験を継承する学習、沖縄の地上戦を学ぶ学習、その地域の空襲体験、戦時下の人々の生活などについての教育実践が多く行われてきました。けれども、戦後80年近くが経過して、戦争体験者は、生まれてくる子どもたちにとっては曾祖父母(ひいおじいさんやひいおばあさん)の間柄になってきました。学校の教師のほとんどが戦後生まれとなって、すでに20年近くが経過しています。 戦争が遠くなり長く日本の平和が続いたという意味では喜ばしいことですが、忘れた頃に災害はやってくると言います。その間に戦争の方法は変化し、進化し続けています。2022年2月に、ウクライナ戦争がロシアによる軍事侵攻で始まりました。アジア太平洋戦争は日本が始めたので、戦争を防ぐためには、一つには戦争の実相を子どもたちにしっかり伝えていかなければなりません。それにより、戦争の集合的記憶を日本社会に活性化した状態で保つ必要があります。 しかし、戦争が無いだけで平和の条件が満たされたとは言えず、人々の基本的人権が保障された、より平和な社会を構築し形成していくく必要があります。そして、日本だけでなく、世界の人々と手をたずさえて平和な国際社会にしていくことが目指されます。HPでは、平和教育についてそのような課題意識を持つ学生や教師に向けて、平和教育の授業づくりの方法を提案します。 このHPは、前編の理論編(1、2)と、後編の実践編(3〜6)に分かれます。平和教育の理論編では、平和教育がなぜ必要か、そして平和教育の系統的な学習目標、平和教育の評価方法について記載しています。つづいて実践編では、平和教育の授業づくりの手順、そして平和教育の具体的な実践方法を載せています。さらに、平和教育についてよくある質問とその回答を掲載しています。 読者である学生や教師には、平和教育の実践編の方が身近な内容なので、実践編から読んだ方がよいかもしれません。「平和教育の授業づくりの方法」を手引として、平和教育の実践を試みてください。また、ご自身の実践の意義付けや理由付け、平和教育の全体像の把握のために、前編の平和教育の理論編をお読みいただく方法もあります。 『平和教育の授業づくり』の初版は2014年に発行し、2016年に改訂しました。近年では、新型コロナ感染症が広がり社会生活が大きく変わり、2022年のロシア軍のウクライナへの侵攻により国際情勢が一気に変わりました。このHPが、そうした状況下の学校現場で、平和教育を実践する教師のために少しでも役立つことを願っています。 【制作担当は以下の通りです】 村上登司文・・・ はじめに、1、2、及び7(一部、制作者について 高見 祥一 ・・・ 3〜6、及び7の一部 |